紹介:
"私は銀刺狼毒草(ぎんしろうどくそう)に侵され、刻一刻と死に近づいていた。唯一の解毒薬は、「奇跡の霊薬」と呼ばれるものだった。
だが、私の番である橘蓮は、大枚を叩いてその貴重な霊薬を手に入れるとーーあろうことか、養妹の藤村葵に与えてしまった。
彼は、私が気を引くために仮病を使っていると思い込んでいたのだ。
私はもう、治療を諦めた。ただ強力な鎮痛剤を喉の奥へと流し込む。三日後、その毒薬同然の薬が全身の臓器をボロボロに蝕み、私は息絶えるだろう。
残されたその三日間で、私はすべてを手放すことにした。
血を吐くような思いで一から築き上げた毛皮製造会社を葵に譲り渡すと、両親は「妹思いの優しい姉だ」と私を褒め称えた。
番の絆を解消したいと申し出ると、蓮は「やっと物分かりが良くなったか」と満足そうに鼻で笑った。
息子の湊に「これからは葵を『お母さん』と呼んでいいのよ」と告げると、湊は嬉しそうに跳ね起き、「新しいお母さん、だーいすき!」と言い放った。
全財産を葵の名義に移転しても、誰一人として疑問を抱く者はいなかった。周りはただ、私が「改心した」ことに、心底安堵しているようだった。
「澄香も、やっとまともになってくれたな」
私は心の中で、静かに自問したーー私がこの世を去った後、彼らは少しでも後悔してくれるのだろうか?"
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